もののけ姫




タイトル「もののけ姫」

ご注意:映画のもののけ姫とは別物です。

宮崎駿氏のイメージボード集と絵本をミックスし
内容に編集を加えたものです。

所要時間は10分~15分ぐらいになると思います。

登場人物(ナレーター、もののけ、武士、奥方、(鬼瓦:悪霊)、三の姫、大亀、村人)

登場人物は多いですが、セリフの少ないキャラも多いので男女でわけるなどして
適当に振り分けて下さい。m(_ _)m
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-01-
ナレーター:
        戦いに敗れ敗走する武士が、山の中で迷っていた。

        疲れを忘れるほどさまよった頃、武士は(灯/あかり)を見つけた。

        そこは大きな木の(洞/ほら)を利用して作られた家だった。


-02-

ナレーター:
        人の気配はなく、食べ物がたくさんあった。

        つい、ガツガツと無断で食べ始める。

        ふいにあやしい気配がした。(主/あるじ)が戻ってきたのだ。

        その(洞/ほら)は、この山に巣くう恐ろしい大山猫の家だった。

もののけ:
       「お前が食った飯を、今度は俺がおまえごと食う」


-03-

ナレーター:
        びっくりした武士はあわてて命乞いをした。

武士:
       「助けてくれ、わしの三人の娘のうちひとりを嫁にやるから」

ナレーター:
        もののけは包丁を止め、少し考えた。

もののけ:
       「ひとりだけか?……まあいいだろう、その約束、忘れるな」

ナレーター:
        命をとりとめた武士は、もののけの案内でなんとか無事に

        館に帰ることができた。


-04-

武士:
       「かくかくしかじか…」

ナレーター:
        奥方に、事の次第を説明した。

奥方:
       「戦いに敗れ、おまけにもののけに娘をやれとは……」

       「なんという不甲斐なさ、敵軍が迫っているというのに」

ナレーター:
        奥方は一の姫、二の姫を連れて、里へ帰ってしまった。

        残ったのは、心やさしい三の姫のみだった。


-05-

ナレーター:
        追い詰められた武士の前に、天井を突き破って
        
        大屋根の鬼瓦が現れた。

鬼瓦:
       「体を貸せば、強い男にしてやろう」

ナレーター:
        三の姫が止めるのもきかず、武士は鬼瓦の話にまんまと

        のってしまい、生まれ変わった。


-06-

ナレーター:
        ガツガツと大量の飯をかきこみ、先祖伝来の重すぎて

        着られなかった甲冑も軽々と着込んだ。

        押し寄せた敵軍をたったひとりで迎え討ち

        (死人/しびと)の山を築いて、世にも恐ろしい武将となった。


-07-

ナレーター:
        武士はしだいに、秘密を知る三の姫が(疎/うと)ましくなった。

        だが、姫を遠ざけるなど、たやすいこと

        もののけが来ることはわかっていた。

        そして、約束どおり、もののけが嫁をとりに来た。

武士:
       「お前なぞ、もののけの嫁がちょうどいい」

ナレーター:
        武士の(嬉々/きき)とした声が響いた。


-08-

ナレーター:
        もののけに背負われ、三の姫は人里はなれた土地へと

        連れ去られていった。


-09-

        (洞/ほら)に着き、もののけは用意していた食べ物を並べた。

もののけ:
       「さあ、婚礼じゃ、飲め、食え」

ナレーター:
        浮かれるもののけに対し、姫はかたくなに言い放った。

三の姫:
       「父を人間に戻すまでは、嫁になるわけにはいきません」


-10-

ナレーター:
        いっこうになびかぬ姫に、もののけが逆上した。

もののけ:
       「言うことを聞かぬ姫など、食っちまう」

ナレーター:
        しかし、おどせどすかせど、三の姫は降参しなかった。


-11-

もののけ:
       「ええい、どうしろと言うんじゃ」

三の姫:
       「どうか力を貸してください」

       「悪霊を退散させることが出来れば

        必ず、あなたの嫁になりますから」

ナレーター:
        もののけは三の姫の願いを聞き入れた。

もののけ:
       「しようもない。その約束忘れるな」


-12-

ナレーター:
        悪霊退散の方法を探す、つらい旅がはじまった。

        山また山のその奥に、もの知りの大亀が住むという。

        弱音を吐くかとおもいきや、三の姫はけなげに耐えた。

        なんと面倒なと(苛立/いらだ)ちながらも、もののけの情は姫に

        移っていった。


-13-

ナレーター:
        (深山幽谷/しんざんゆうこく)を抜け、国が生まれた時からの森を通り

        ついに大亀と出会った。

        物知りの大亀は、三の姫の話に耳をかした。


-14-

大亀:
       「求める心があるからこそ、悪霊は人に取り憑くのだ」

       「少しの間、悪霊をおさえる力を授けよう」

       「望みがあるとするならば、お前の父に人の心が

        わずかでも残っていることだ」

       「湖の底に太古からの宝物が沈んでいる」

       「青銅の鏡をとって来なさい」


-15-

ナレーター:
        大亀の言葉に、三の姫は湖へ入っていった。

        青銅の鏡は、長い年月を経ても、変わらず光を放っていた。


-16-

ナレーター:
        陸に上がった姫に、大亀が最後の忠告をした。

大亀:
       「あとはお前の心の強さが、すべてを決めるだろう」

ナレーター:
        大亀の心配りによって、ふたりは(故里/ふるさと)に

        急ぎ帰ることができた。


-17-

ナレーター:
        三の姫は(故里/ふるさと)の有り様に(茫然/ぼうぜん)となった。

        たった一年の歳月で、小さな館は巨大な城に変わっていた。

        今や悪霊の力はおぞましく、凄まじいものになっていたのだ。

        武具の音が鳴り響き、鉄を打つ炎が大地を焦がし

        (圧政/あっせい)に苦しむ人々の(怨嗟/えんさ)の声が地に満ちていた。


-18-

ナレーター:
        悪霊は透視の術で不吉を感じ、三の姫に(討手/うって)をくり出したが

        もののけが姫を守り(大奮戦/だいふんせん)した。

もののけ:
       「俺の嫁に手を出すな!」

ナレーター:  傷つきながらも、もののけは、三の姫を守り

        なんとか無事に逃げ延びた。


-19-

ナレーター:
        今はふたりの心にかよいあうものがあった。

        もののけが深い眠りについた頃、姫はそっと鏡を取り出した。

        月の光の中で、眠っている青年の姿が鏡にうつった。

        それは、もののけの本当の姿だった。


-20-

ナレーター:
        けもののように暴れ、けもののように暮らすうちに

        いつしか、けものの姿になっていた。

        悲しみに暮れる、もののけが鏡にうつった。


-21-

ナレーター:
        三の姫はもののけの悲しみを知り

        彼を愛している自分の心も知った。

三の姫:
       「でも、あなたとの約束をはたすことは出来ません」

       「私は父のもとへ参ります。どうか許してください」

ナレーター:
        三の姫はひとり城へおもむいた。


-22-

三の姫:
       「もののけの元に嫁いだ娘が里帰りしたのです」

       「道をあけなさい」

ナレーター:
        三の姫の気品ある態度に、(旗本/はたもと)達も道をあけた。


-23-

ナレーター:
        目覚めたもののけは、姫がいないのに気づいた。

        もののけはあわてて村へ走った。

もののけ:
       「三の姫を見なかったか!」

村人:
       「お、お城へ行きました。おひとりで」

もののけ:
       「ナニッ!」


-24-

ナレーター:
        もののけは姿を隠すことも忘れて城へ向かった。

        驚く兵達を気にも止めず、飛び込んでいった。


-25-

ナレーター:
        三の姫は城内の奥へ奥へと進んでいった。

        そして(父娘/おやこ)は出会った。

武士:
       「もののけに嫁いだ娘が、父親に逆らうとは

        思い上がりの愚か者め」

ナレーター:
        父は、もはや心ばかりか身体まで

        悪霊に食いつくされていた。


-26-

ナレーター:
        殺気とおぞましい霊気を一身にあびながら

        三の姫は立ち向かった。


-27-

もののけ:
       「じゃまだ、どけ!」

ナレーター:
        悪い予感にもののけはあせった。


-28-

ナレーター:
        刀を振りかざし向かって来る悪霊に

        姫は隠し持っていた鏡をかざした。

        三の姫はたじろぐ父の懐に身を投げた。

        鏡は粉々に砕け、たまりかねた

        悪霊が武士の身体から(逃/のが)れでた。


-29-

ナレーター:
        娘は父を抱きしめた。

        (逃/のが)れでた悪霊は、かたわらの甲冑に乗り移った。

        血をすすって成長していた悪霊は、実体になりつつあった。

        (父娘/おやこ)へ向け鉄面の口から地獄の(劫火/ごうか)がほとばしった。


-30-

ナレーター:
        そのとき、もののけが飛び込んできた。

        炎を一身に受け止め、火だるまになりつつ

        悪霊に襲いかかった。

        かなわじと(逃/のが)れる悪霊に、(逃/のが)すまいと

        もののけが追いすがった。


-31-

ナレーター:
        もののけと悪霊を炎が包み込んだ。

悪霊:
       「ギャーッ」


ナレーター:
        悪霊が燃え尽き、もののけも力尽きて崩れ落ちる。


-32-

ナレーター:
        もののけに駆け寄り、三の姫が泣きすがった。

        と、その腕が動いた、生きている!


-33-

もののけ:
       「わしは山一番のもののけだ」

       「かわいい嫁をのこして死んでたまるか」

       「ワッハハハ」


-34-

ナレーター:
        武士は娘に(看取/みと)られながら、人間として息をひきとった。


-35-

ナレーター:
        (圧政/あっせい)に苦しんでいた人々が立ち上がった。

        城門は打ち砕かれ、火の手が広がった。

        悪霊の築いた城は燃え落ちた。


-36-

ナレーター:
        もののけは娘を背負い山へ帰っていった。


おしまい!