「ワタシとアルジ」
ワタシは小さかった頃、山でアルジに拾われた。
今でも、その時の風景と感触を思い出す。
アルジとワタシはそれからずっと一緒に暮らしている。
ワタシはアルジと山に入るのが好きだ。
今日もアルジと山に出かけた。
小さいイキモノを捕まえてほめてもらおう。
耳の大きな小さいイキモノを見つけた。
ピョンピョン跳ねて、すばしっこいヤツだ。
頑張って追いかけたが、うまく逃げられてしまった。
おや、アルジがワタシを呼んだような気がする。
何か嫌な感じだ……。
ワタシは急いでアルジのもとへ走った。
思っていたよりも、アルジから離れてしまっていた。
アルジのニオイと一緒に大きいイキモノのニオイがする。
やはり大きいイキモノがいた。
アルジが倒れこんで血を流している。
ワタシは怒りでいっぱいになった。
ユルサナイ!
ワタシはアルジを傷つけた大きなイキモノの鼻に噛み付いた。
大きなイキモノはワタシを払い飛ばした。
激痛が走ったが、かまわず飛びかかって首に噛み付いた。
力の限り牙を立ててやった。
大きなイキモノはひどく暴れたが、ワタシは決して離さなかった。
やがて大きなイキモノは動かなくなった。
ワタシは重たくなった体を引きずりアルジのもとへ向かった。
アルジは動かなくなっていた。
アルジのニオイを嗅いで顔をそっと舐める。
しばらく、じっとアルジを見ていた。
眠くなってきたので、アルジに身をすり寄せ目を閉じた。
アルジに抱かれて山を降りた時の夢を見た。
アルジの温もりと、おだやかな風が心地よかった。
空はどこまでもどこまでも続いていた。
おしまい。
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