ワタシとアルジ


「ワタシとアルジ」

 

ワタシは小さかった頃、山でアルジに拾われた。

今でも、その時の風景と感触を思い出す。

アルジとワタシはそれからずっと一緒に暮らしている。

 

ワタシはアルジと山に入るのが好きだ。

今日もアルジと山に出かけた。

小さいイキモノを捕まえてほめてもらおう。

耳の大きな小さいイキモノを見つけた。

ピョンピョン跳ねて、すばしっこいヤツだ。

頑張って追いかけたが、うまく逃げられてしまった。

 

おや、アルジがワタシを呼んだような気がする。

何か嫌な感じだ……。

ワタシは急いでアルジのもとへ走った。

思っていたよりも、アルジから離れてしまっていた。

アルジのニオイと一緒に大きいイキモノのニオイがする。

 

やはり大きいイキモノがいた。

アルジが倒れこんで血を流している。

ワタシは怒りでいっぱいになった。

ユルサナイ!

ワタシはアルジを傷つけた大きなイキモノの鼻に噛み付いた。

大きなイキモノはワタシを払い飛ばした。

 

激痛が走ったが、かまわず飛びかかって首に噛み付いた。

力の限り牙を立ててやった。

大きなイキモノはひどく暴れたが、ワタシは決して離さなかった。

やがて大きなイキモノは動かなくなった。

 

ワタシは重たくなった体を引きずりアルジのもとへ向かった。

アルジは動かなくなっていた。

アルジのニオイを嗅いで顔をそっと舐める。

しばらく、じっとアルジを見ていた。

眠くなってきたので、アルジに身をすり寄せ目を閉じた。

 

アルジに抱かれて山を降りた時の夢を見た。

アルジの温もりと、おだやかな風が心地よかった。

空はどこまでもどこまでも続いていた。

 

おしまい。

 

 

あとがき

かなり前に絵本用として製作したお話です。こちらはYARUKA実験室

 

ウェブアプリとしても、ご覧いただけますので宜しければご確認下さい。

 

(2014/3/15)


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